
Vol.3
Vol.3
東京會舘クッキングスクールに通ってくれないか?

これは今から二十七年程前、私が彼(現在の夫)に言われた言葉です。学生時代に知り合って三年程経った頃だったと思います。同い年の我々の趣味の一つは、美味しい料理をいただくこと。当時はかなり背伸びをして訪れた東京會舘です。
トラディショナルな料理や雰囲気を吸収していた時期でもありました。「信枝ちゃんの作った美味しい料理が食べたい。」と言った彼。これは私にとっての一大事でした。何しろ料理という料理を作ったことがないのですから。しかし若さも手伝い、グルメな彼に手作り料理を食べさせてあげたい一心で、私のクッキングスクール通いがスタートしました。仕事を終えてからスクールに直行。
助手の方々の手を煩わせながらも、何とか二年間通わせていただきました。スクール終了後にはカフェテラスでヨーグルトドリンクを頂くのも楽しみの一つで、班の友人達と今日の反省や将来の夢を語り合ったのも懐かしく思い出されます。今、私の手元には当時のスクールテキストが置いてあります。ボールペンで書き込んだ跡や料理の染みなどが付着し、かなり年季が入っていますが、私の料理の基礎を築いてくれた大切な宝物。青春の一品です。
そんな我々の一人娘も今年で二十歳。小学校入学の折、ピアノ発表会の後など両家の祖父母と訪れた東苑。サロンコンサート等、我家の節目には必ずと言っていい程、東京會舘がありました。近々娘が成人した折には、家族で少しおしゃれをし、プルニエで食事を・・・と考えております。
フランスの淑女にならい、あなたもレディの仲間入りなのよ、との願いを込めて。日本の伝統よ、永遠に美しくあれ。変わらぬ正統をありがとうございます。
二神 信枝様